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大阪高等裁判所 平成7年(ネ)1329号 判決 1995年12月26日

控訴人

中西良也

右訴訟代理人弁護士

皆見一夫

被控訴人

安田火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

有吉孝一

右訴訟代理人弁護士

明石博隆

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、金五八七万五〇〇〇円及びこれに対する平成六年六月九日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二  事案の概要及び争点

次のとおり訂正するほかは、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二枚目表一一行目の「限定運転者 原告及びその家族」を次のとおり改める。

「記名被保険者(原告)及びその家族以外の者が被保険自動車を運転している間に生じた事故については、保険金を支払わない。この場合、被保険者の家族とは、同居の親族及び別居の未婚の子を指す。」

2  同二枚目裏七行目の「大破させた」を「大破させたところ、これによる損害の額は五八七万五〇〇〇円である。」と改める。

3  同二枚目裏八行目冒頭から一一行目末尾までを次のとおり改める。

「三 争点に関する双方の主張

(一)  原告

昭友は事故の前日である同年四月三〇日渡辺保子との婚姻の届出をして既婚となり、また、住民票の上でも、同日宝塚市売布三丁目四番一五号の原告方(第二建物)から同市清荒神一丁目一一番一号(第一建物)に転入したように記載されているが、新婚生活開始前の事故であったため、昭友夫婦は婚姻後一度も第一建物で寝泊りしないで原告方で生活していたばかりでなく、第一建物は原告の経営する乾物商の店舗の二階であり、日常生活上も、原告夫婦と昭友夫婦とが共同で時間を過ごすことが多くなることが予定されていたのであるから、本件事故当時、昭友はなお原告の同居の親族であったというべきである。

(二)  被告

本件事故当時、昭友がすでに婚姻し、住民登録上の住所を第一建物に移転していた以上、社会通念上、同人が原告と住居を同じくする同居の親族でなくなっていたことは明らかである。」

第三  証拠

原審及び当審記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三枚目表二行目の「八、」を「六ないし」と改め、「四、」の次に「六、」を加える。

2  同三枚目裏一一行目から同四枚目表一一行目までを次のとおり改める。

「二 そこで、本件事故当時、昭友が原告の「同居の」親族であったかどうかについて検討するに、本件特約条項における「同居」の意義については、特にこれを定義する約款も存在しないので、その文字の通常の用法に従って、社会通念上同一の住居に居住していることと解するよりほかはないというべきところ、原告本人尋問の結果中に、昭友は結婚後は第一建物に居住することになっていたけれども、結婚式の前はもとより、新婚旅行より帰ってきた後本件事故を起こすまでの二、三日間も原告方で寝泊りし、第一建物で生活したことはなく、結局、第一建物では一度も生活せず、原告方で居住する状態が継続していた旨の供述部分があるので、仮りにこの供述が信用できるものであるならば、本件事故当時、昭友は事実上未だ転居するには至っていなかったものとみる余地がないわけではない。

しかしながら、前記一で認定した諸事情に照らせば、右供述部分は甚だ不自然であってとうてい採用するわけにはいかず、右事実関係を総合すれば、本件事故当時、昭友はすでにその住居を第一建物に移転し、原告の「同居の」親族ではなくなっていたものと認定するのが相当というべきである。甲一一の一、二及び検甲一の一ないし一四は右供述部分を補強するほどのものではないし、また、第一建物が原告の経営する乾物商の店舗の二階であることも、右認定を動かすに足りるような事情ということはできない。

三 以上のとおりであるとすると、本件事故は、記名被保険者である原告及びその家族以外の者が被保険自動車を運転している間に生じたものというべきであって、特約条項により被告は保険金の支払義務を負わないことになるので、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないといわなければならない。」

二  結論

以上の次第で、本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤原弘道 裁判官 辰巳和男 裁判官 楠本新)

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